麻原逮捕の日を思い出す

本当に辛いときはね

藁にもすがりたくなるもんなんよ

 

こんにちは。とむらいマンです。

2018年7月6日。オウム真理教の麻原彰晃と、元教団員7人の死刑が執行されました。

オウム・・・

オウムですよ。オウム真理教。

考えさせられるなあ。いろいろ。

阪神大震災。オウム真理教。

あの年、僕は14歳でした。

中2の僕は、教室の机に腰かけて数学の授業を受けていたんですね。

5月16日という、なんともさわやかな風が教室の中に入ってくる中で、

女の子の着るブラウスから透き通るブラのひもをぼんやり眺めておったのです。

中学2年生ってのは、そういう年頃ですよ。

窓の外に青空が広がっていたのも覚えています。

授業中に廊下を向こうから走ってくる大人の足音がドタドタドタ・・・・

 

「麻原が逮捕されたぞぉ!」

 

学年主任だったか、教頭だったか忘れましたが(まあここでは教頭ということで)、

えらい興奮の模様で、自分こそが鬼の首をとったかのように、

 

「麻原が逮捕されたぞぉ!」

 

と叫びながら、授業中にも関わらず、1クラスずつを巡っていったのです。

担任「えっ? 麻原が逮捕されたんですか?」

教頭「そう。麻原が逮捕されたんだよ!」

担任「おまえたち! 麻原が逮捕されたぞ!」

生徒たち「っぉよっしゃー!」「きゃー!」

・・・てな感じで狂喜が渦巻いたのをよーーく覚えてます。

当時の僕はあれを見て、「ああ、全体主義ってきっとこんな感じなんだな」と思ったのをいまでも覚えてます。

それが、なんか怖かったなあ。

まがりなりにも教育機関。公務員の教師たちがあそこまでタガを外した姿を見たことがない。

僕は1981年生まれですが、

多分この36年間で、日本にとっての共通の、絶対的な「敵」というのは、

オウム以外、あとにも先にもなかったのではないでしょうか。

 

オウムは明らかに日本社会の「敵」でした

 

オウムがいいとか悪いとかではなく(もちろん超がつくくらいの悪者なのですが…)

なんか、1つの敵、異物、獲物を、

集団で、派閥なんてない状態で、100:0の状態で攻撃する雰囲気が、

異様で、怖かったのを思い出します。

敵なき時代には病がはびこりますが、

あの瞬間、クラスのみんなは病すら吹き飛ばして、麻原逮捕の知らせに狂乱しましたね。

この手のテーマで秀逸なのは、やっぱ森達也さんの映画「A」です。

 

オウムの側から見た警察やマスコミをはじめとする日本社会がいかに異様だったかを暴きだしている。

石井輝男さんの『地獄』も怖かった。

ホラーユーモアの粋を行く映画だけど、教団内の閉塞感の描写がたまらんほどに怖く、エロい。

 

あと、オウム真理教が僕たちに突きつけたのは、

 

目に見えないものにひれ伏す姿の異様さ

 

だったのではないでしょうか。

つまり、宗教。信仰。ということなのですね。

「宗教=悪」としたのは麻原最大の罪でしょう。

 

とむらい家の話をひとつ。

あのころ、わが家は錯乱状態で、崩壊寸前でした。

「ああ、家族って、こんなにも愛し合っているのに、ひとつ歯車が狂うだけで、こんなにも簡単にバラバラになって、離れて、壊れていくんだ」

日々そんなことばかり考えてました。

母もそんな地獄の日々をなんとかしたかったんでしょう。

わが家には仏壇があるというのに、

どこかから買ってきた仏壇を別の部屋にこしらえて、うやうやしく頭を下げては、

おでこを畳に押し付けて、お経をもにょもにょ読むんです。

うやうやしく頭を下げるその姿を見て、

「これ、あの、テレビでオウムたちがやってたやつじゃんか!」

…と驚いたものです。

宗教の免疫すらない僕は、目に見えないものに祈り、ひれ伏す姿そのものが異様でした。

 

「本当に辛いときはね、藁にもすがりたくなるもんなんよ」

 

これは、そのころを回顧した、最晩年の母の言葉でした。

あのころ、母は、藁にもすがりたいほどに、辛かったんだな。

 

僕が「宗教」という言葉を知ったのは、オウムの事件からです

僕はそれまで、宗教を「宗教」という言葉を用いずに認識していました。

それまで、仏壇に手を合わすのも、お墓参りも、初詣も、お寺も神社も、

「宗教」という言葉で認識なんてしていなかったのです。

「宗教」という2字は、いまでも社会にアレルギーを引き起こしさえしますが、

僕は、宗教ってのは人類が幸せになるために編み出された智慧だとの表れだと思うし、

なによりも、宗教に頼らざるを得ない人たちを、きちんと認めてあげたいと、思う。

 

平成が終わる。

麻原が歪めた「宗教」という語感。

このすばらしい人間の智慧を再評価する時が、近づいている。

 

とむらいマン

 

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