土もお墓 木もお墓 それでも石のお墓が一番好まれるニッポン的な理由

石には宇宙が刻印されている

 

こんにちは。とむらいマンです。

みなさん「お墓」と聞くと「墓石」を連想しますよね。

「お墓」という言葉を辞書で調べると、こうあります。

 

遺体・遺骨を埋葬した場所。また、そこに記念のために建てられた建造物。塚。

 

どこにも「石」なんて特定してないわけです。

ところが僕たちはほぼ100%、「お墓」と聞くと「墓石」を連想するわけですね。

 

よくよく見てみると、石を使わないお墓というのはたくさんあります。

あるのを、ご存知でしたか?

 

たとえば塚(つか)

写真は奈良県の明日香村の高松塚古墳。(出典:Wikipedia『高松塚古墳』

 

塚とは土まんじゅうですね。

遺体を埋葬してこんもりと土を盛り上げます。

日本の古墳も原型は塚ですし、中国や韓国などではいまでも塚は一般的な葬法だと言われています(古墳の場合、「石室」といって、内部では石をたくさん使ってます)。

ちなみにグリム童話に「どまんじゅう」って話がありますね。

ヨーロッパでもお墓として土をこんもり盛り上げていたようです。

 

たとえば、塔婆(とうば)。

写真はとむらいマンが撮影したもの。お世話になっているお寺の墓地です。真ん中に見える頭の尖った角柱の木が「角塔婆」。その後ろの平たい背の高い木の板が「板塔婆」。この土中に遺骨が埋葬されていたのです。

 

塔婆は死者供養のための木の板。

いまでは墓石の後ろに添えるのをよく見ますが、もともとは墓標としていました。

つまり、埋葬地に木を立てて、「亡くなった人が埋まっていますよー」という印にしたわけです。

塔婆はサンスクリット語の「ストゥーパ」(=仏塔)が訳されたもの。

ですから、塔婆の先端は五輪塔をかたどった形状になっていて、表面には戒名や経文が書かれます。

 

たとえばいま流行の樹木葬

写真は都営小平霊園の樹木墓地。(出典:Wikipedia『樹木葬』

 

樹木葬だって石を用いないお墓です。

ここ数年でぐんと注目を浴びて多くの人に選ばれていますが、

こうしてさまざまな「お墓」を見てみると、樹木葬が決して真新しいお墓の形ではなかったということがよくわかります。

 

さて、このように、石以外のお墓もたくさんあるのですが、

 

それでも「お墓」が「石」である理由って、なんなのでしょうか。

とむらいマンが考えるにはですね、

 

人の寿命よりも長くそこに居続けられること

 

…これに尽きますわ。

石の堅牢性と耐久性は、この自然界で最も優れています。

木は燃えると消えてなくなります。

嵐が吹き荒れてなぎ倒されることもしばしば。

日本人って、「ご先祖様」への信仰をとても大切にしている民族です。

それは、超越的な神とかではなく、

自分たちと同じように、かつてのこの世界を生きた、

リアルにつながりのある存在なんです。

長い時間をかけてつながってきた、縦の関係性そのものなわけです。

だからこそ、手を合わす対象として、

世代を超えて、風雪に耐えるものが必要だったわけで、

それには、「石」しかなかったのですね。

 

よくよく考えてみますとですよ、

石は古今東西を見渡しても、人間が大切にする自然物でした。

イギリスのストーンヘンジは祭祀の場であったと言われていますし、

いまでも日本の神社では磐座(いわくら)と言って、岩にしめ縄をして礼拝の対象となっています。

また、人類は石を打って火を起こしましたし、

石を使って物を加工し武器にもしました。

文明のはじまりに石は不可欠だったのですよ。

宝石商のデビアスは「ダイヤモンドは永遠と愛の象徴」なんて言ってますし、

宝石も立派な石なのです。

さまざまな面から、石は人智を超えたものとして捉えられているのです。

 

さあて、

なんで今日、こんなブログを書いたかというと、

NHKの『ニュース9』で石碑のことをしていたからです。

 

 

途中から見たので、ニュースの全体像は分からないのですが、

遠い昔の災害の記憶を、石碑がいまを生きる私たちに教えてくれるという内容。

甚大な災害に見舞われた私たちの先祖は、その記録を石碑にして残すことで、

自分たちの子孫に警告を発してくれているのです。

先祖と子孫のつながりは何もお墓だけではないのです。

世代を超えてつながりあえる媒介として、石以上のものはありません。

だからこそ、日本人にとって、お墓とは石なのです。

 

とむらいマン

 

PS 冒頭のかっこいい言葉「石には宇宙が刻印されている」は奥泉光の小説『石の来歴』内の一説だそうです。また買って読もう!

コメント

タイトルとURLをコピーしました