怒りの感情を抑えてコントロールする「アンガーマネジメント」が注目を集めていますが、この記事では、アンガーマネジメントする上で、お仏壇がとっても有効だという、というお話しをいたします。
アンガーマネジメントとは
アンガーマネジメントとは、直訳すると「怒りの管理・コントロール」。自身の中から湧き出てくる怒りやイライラを客観視して、心の健康を保つためのスキルのことです。
ぼくたちは、なにかにつけてイライラしてしまいます。
家庭内の、職場の、友人たちとの人間関係でイライラ。
会社の、PTAの、国の体たらくにイライラ。
不倫する芸能人や、公金流用する政治家にイライラ。
でも、怒りってなにも生み出さないどころか、相手を傷つけ、自分の心も傷つけ、最後には人間関係を崩壊させかねません。
仏教ではぼくたちにダメージを与える3大害悪を「三毒(貪・瞋・痴)」と呼び、真ん中の「瞋」とは怒りのことを指します。
余裕がなくて、すぐにイライラして、怒りっぽくなり、さらにはそのことに気を病んで自己嫌悪に陥ってしまう。そんな人が多い世の中だからこそ、アンガーマネジメントが注目されているのでしょう。
そんなアンガーマネジメントをする上で、ぼくはお仏壇を強く推奨します。
理にかなっていて、筋の通ったお話です。アンガーマネジメントに興味がある方、怒りっぽい自分に悩んでいる方は、仏壇屋さんのポジショントークだと思わずに、ぜひとも最後まで読んでみて下さい。
アンガーマネジメントの代名詞「6秒ルール」
日本アンガーマネジメント協会は、アンガーマネジメントとは「怒りの感情と上手に付き合うための心理教育、心理トレーニング」と定義しています。
そんな、アンガーマネジメントの代名詞とも言われているのが「6秒ルール」です。
これは、怒りが感情的に込み上げてきたとき、6秒ほど我慢すれば、怒りが徐々に弱まっていくというもの。怒りの感情というものは、6秒でピークに達するのだそうです。
でも、とっさにやって来る怒りに対して、どのように6秒をやり過ごせばいいかだなんて、分からないですよね。
そんな時こそ、言霊の力です。
言霊。直訳すると「霊魂の込められた言葉」。そして、日本において言霊といえば、仏教をおいてほかにありません。
南無阿弥陀仏!
南無大師遍照金剛!
南無妙法蓮華経!
羯諦羯諦(ギャーテーギャーテイ)!
六根清浄!
ね。どれも6秒で唱えられそうなものばかりでしょ。
特に「南無阿弥陀仏」なんて、漢字6文字で構成されています。「南!無!阿!弥!陀!仏!」と、それぞれのことばを1秒ずつお唱えすることで、気づくと6秒が経過しています。また、一回の「なまんだぶつ」は約1秒で唱えられますから、これを6回くり返すことによっても、6秒ルールのでき上がりです。
仏教にはたくさんの流派があるので、「南無阿弥陀仏」でなくても構いません。「南無妙法蓮華経」でも、「南無大師遍照金剛」でも、一番お好きなものでどうぞ。
どうしても「宗教色のあることばはヤダ!」という方は、
「ありがとう」
「なんとかなる」
「大丈夫」
「怒るな怒るな」
…といったことばでも、いいと思います。まず何よりも、あなたの心が落ち着くことばで6秒をやり過ごすことが大事です。
でも、こうしたことばよりも、仏さまへの信仰が乗っかったことばの方がより有効である理由を、続けてお話していきますね。
仏さまのやさしさに触れられることばたち
ここに挙げたことばたちって、ただのおまじないでなく、仏さまのやさしさに触れられることばなんです。
ですから、言霊それ自体が、怒りの先にあるやさしくて心穏やかな心境を表しています(ちなみに仏教ではこの境地を「涅槃(ニルヴァーナ)と呼んでます)。
具体的に見ていきましょう。
南無阿弥陀仏
「南無阿弥陀仏」とは「阿弥陀さまを心から信じます」の意味で、「お念仏」とも呼ばれます。
阿弥陀如来は極楽浄土という、清らかで穏やかな世界を作られた仏さまで、心を込めて「南無阿弥陀仏」を唱えることで、その極楽浄土に連れて行ってもらえます。きっとそこには、怒りやイライラなんて存在すらしていないでしょう。
南無妙法蓮華経
「南無妙法蓮華経」とは「お題目」とも呼ばれ、「南無阿弥陀仏」のお念仏と双璧をなす、こちらもメジャーな言霊です。
「お釈迦さまの正しい教えを説かれた『法華経』を信仰します」という意味で、『法華経』には、人は誰もが平等に仏になれると説かれています。
南無大師遍照金剛
「南無大師遍照金剛」とは、「遍照金剛(=弘法大師さま)に帰依します」の意味。
平安時代に真言宗を開いた弘法大師空海は、持ち前の明るさとコミュ力、そして天才的な才覚で国中の人々を救済し、いまも慕われ続けているお方です。日本仏教界の大スターの名前を呼ぶことで、ぼくたちは元気と安心をいただけるのです。
羯諦羯諦(ギャーテイギャーテイ)
「羯諦羯諦」とは、日本で最も有名なお経である『般若心経』の中の一説。「彼岸に行こう!行こう!」という意味だと言われており、怒りにかまけることなく穏やかで楽しい世界(=彼岸)に行こうぜといった前向きでキャッチ―な掛け声です。
六根清浄
「六根清浄」とは、人に具わった六根(目、耳、鼻、舌、身体、心)を清らかにしましょうと言う掛け声。怒りなんか取っ払って、すがすがしい境地で世界と向き合おうよというメッセージが込められています。
こうしてみると、どのことばにも、怒りなんてない仏さまの穏やかな世界を求める人々の想いが込められていることが分かります。
ただ6秒をやり過ごすだけでなく、そのことばを唱えることで、仏さまのやさしさに触れられるのです。
アンガーマネジメントをしようと6秒ルールにチャレンジする時は、ぜひともこうした言霊を用いてもらいたいものです。
6秒ルールの習慣化としてのお仏壇
でも、とっさに「南無阿弥陀仏」や「南無妙法蓮華経」を唱えられるかというと、そう簡単なものではなく、これまたトレーニングがいるわけです。
歩きながら、あるいはバスや電車の中で、「なまんだぶつ」や「なんみょうー」といった具合にトレーニングしてももちろん構いませんが、周りから変な目で見られてしまうかもしれないのが現代の日本です。
そんな時こそ、お仏壇です。おうちの中にあるお仏壇の前で、こうした言霊を唱えたって、誰も見てませんし、なにもおかしいことはありません(むしろ、言霊を唱えるために仏壇がある)。
しかもお仏壇の場合、わざわざトレーニングのために時間を割かなくてもいいのです。朝と夕、毎日当たり前のように行う礼拝の時に、あなたにとっての言霊を口にしてみるだけでOKです。
これが習慣化すると、いつしか無意識のうちに、6秒ルールが実践できているはずです。怒りが「ぐわっ」と湧き上がった時も、口から自然と…
「なまんだぶつ」
「なむみょーほーれんげきょうー」
…などとお唱えし、気づくと6秒が経過しているでしょう。
6秒ルールをはるか超えて
こうした言霊のすごいところは、アンガーマネジメントだけにはとどまらない点です。
6秒をやり過ごすためだった言霊は、あなたの血肉となり、いつだって、どんな時だって、6秒をはるか超えて、あなたを支えることばになってくれます。
怒りに苦しむ時だけでなく、怖い時、寂しい時、苦しい時、迷った時、悩んだ時、楽しい時、嬉しい時、どんな時にお唱えしても構わないのです。
「どうしよう…。なまんだぶつ」
「助けて下さい…。なまんだぶつ」
「ほっとしました…。なまんだぶつ」
「ありがとう…。なまんだぶつ」
あなたの中から沸き立つさまざまな感情に寄り添うことばとして、こうした言霊が自然と口から出てくるようになった時には、あなたはもはや仏さまです。アンガーマネジメントなどしなくても、とっくに怒りの感情をコントロールできていることでしょう。
そんなアンガーマネジメントの第一歩、入り口が、お仏壇なのです。
日々のお仏壇への礼拝によって、6秒ルールが無理なく身に付きます。そして、人間関係や未熟な自分と闘っているあなたのことを、仏さまや亡き人が見守ってくれていることに気づけることでしょう。
今日という日が、あなたにとって、怒りにとらわれることのない、おだやかなよい一日となりますように。
仏壇カタルシス
仏壇店に勤務するライター・玉川将人が、
インド仏教最高指導者・佐々井秀嶺師からの…
あなたが仏壇の本を書きなさい。
ここにいる人たちの力を借りて
ここにいる人たちのために
本を書きなさい。
…という宿題を成しとげるべく、仏壇にまつわるお話を語っていきます。
あなたの力を貸して下さい。あなたのためのことばを綴ります。
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