お仏壇の扉は開けたまんまでいい。納得の理由を解説します|仏壇カタルシス#16

お仏壇には、扉がついています(最近は扉のない仏壇もたまにありますが…)。

この扉、いつ開けて、いつ閉めればいいのでしょうか?

この記事では、仏壇の扉の役割、そして仏壇の扉の開け閉めについて、くわしく解説いたします。

基本、開けておくのがよい

仏壇屋さんがよく受ける質問に、「お仏壇の扉は、いつ閉めるのですか?」というものがあります。

まずはじめに結論。ぼくはいつもお客様にこうお伝えします。

「基本、開けたまんまでいいですよ」

そもそも扉って、開け閉めのためにあるわけですから、「いつ閉めるの?」という素朴な疑問は、とっても自然なものです。

それなのに、どうして開けたまんまでいいのか。その理由は3つです。

仏さまや亡き人をいつも感じられるから

一番の理由はこれです。

扉を開けたままにしておく方が、仏さまや亡き人をいつもそばに感じられるからです。

扉を閉めてしまうと、仏さまや亡き人の姿が見られなくなるだけでなく、中に閉じ込めてしまう感じすらします。

そうした「風通しの悪さ」「圧迫感」のようなものって、あんまり気持ちのいいものではありません。

いちいち開け閉めするのは大変

仏壇をお祀りしている方は分かると思うのですが、仏壇の開け閉めって、結構大変です。

仏壇にはお供え物を並べるための可動式の板があるのですが(「膳引き」や「中敷」などと呼ばれる)、この上のお供え物を外さないと、扉の開閉ができないのです。

だったら、そのまんまでいいじゃん、ということで、ほとんどのおうちでは扉は開けたまんまです。

扉を閉めると、中が蒸す

扉を閉めてしまうことで、お仏壇の中が蒸して、湿度が上昇します。

お仏壇には、ごはんや飲み物、お花などのお供え物が並び、これら水気のあるものによって、思いのほか湿気が生じているんですね。

湿度はお仏壇の劣化の原因になります。そのことを考えると、扉は開けたまんまの方がいいでしょう。

伝統的な仏壇は「扉」(外側)と「障子」(内側)の二重構造になっている。

ということで、ここまでのことをまとめると、

●仏さまや故人さまとのつながりを感じるため
●そもそも開け閉めは面倒臭いから
●扉を閉じると中が湿気てしまうから

…という3つの理由から、「お仏壇の扉は開けたまんまでいい」というのがぼくからのアドバイスです。

障子は閉じても構わない

伝統的な仏壇の場合、扉が二重になっているものがあります。

この場合、内側の扉は「障子」と呼ばれ、「しゃ」という蚊帳のような網目状の織物が張られています。

さて、この障子を閉じるのはOKです。中が透けることで仏さまや故人さまの姿が見えて、風や空気も通します。

実際に、長期間外出する時、部屋のお掃除をする時など、障子だけを閉めるという方は少なくありません。圧迫感や閉塞感もありませんし、中が蒸れてしまう心配もないでしょう。

お仏壇の扉の本当の役割

では一体、どうしてお仏壇には扉がついているのでしょうか。

もちろん、お仏壇を配達したり、引っ越しをする時などは扉を閉じます。

また、お盆の時や、葬儀が発生した時に仏壇の扉を閉じる風習が、一部地域で見られるそうです。

中にはお仏壇の中に猫が入ってしまうから、扉を閉じるという方もいます。

扉を閉めてはいけないという決まりだって、ありません。

夜眠る時にはお仏壇の扉を閉じて、朝の目覚めとともにお仏壇の扉を開ける。といった具合に、扉の開け閉めそのものが一日の生活のリズムになっている、という方もいるでしょう。

とはいえ、日常的に開け閉めすることのほとんどない扉。

「結局飾りなんですか?」と聞かれることもありますが、そんな時ぼくは「はい、飾りなんです」とお答えしています。

むしろ、飾りとしての意味に着目したい。そこには2つの意味があるだろうと、考えます。

お仏壇は、お寺を小さくしたもの

そもそもお仏壇とは何なのか。これを考える上でとても大切なこととして…

「お仏壇とはお寺を小さくしたものとして普及してきた」

…ということを、まずは押さえてほしいです。

つまり、お寺や本堂の様式を、自宅用にギュッとコンパクトにしたものがお仏壇なのです。

であるならば、お仏壇の扉が何なのか? これはお寺の山門を表しているのです。

西本願寺の山門(阿弥陀堂門)。多くのお寺には山門があり、扉の開け閉めによって聖域と俗域を分けている。

じゃあ、内側の「障子」は何なのか? これは、内陣と外陣を分ける「巻障子」(「折障子」とも言う)を、表しているのです。

西本願寺御影堂。赤枠で示しているのが巻障子。仏さまの空間である「内陣」と、参拝者の空間である「外陣」を分けている。

機能性よりも、シンボルとしての扉

お仏壇の扉は、機能性としてよりも、シンボルとしての意味合いが強いんです。

山門や巻障子は「境界」を示すためにあります。山門は聖域と俗域を、巻障子は内陣と外陣を、区切っているのです。

お仏壇の扉や障子も、境界のシンボルとしての役割があります。開け閉めなんてしなくても、そこに扉があるだけで、境界の存在をほのめかしているのです。

「ここから奥は聖域。少しだけ特別な空間なんだよ」ということを教えてくれるのが、お仏壇の扉なのではないでしょうか。

境界を設けて聖域を作るということは、仏さまや故人さまのいる世界を、自分たちの世界よりもより一段高い場所に設定していることに他なりません。

そして扉がそこにあることで、その境界や、その敬いが、可視化されるのだと、考えます。

ということで、お仏壇の扉を開け閉めするしないはおうちのかたの自由でどうぞ。そこに扉があるだけで、十分にその役目を担っているのです。


仏壇カタルシスとは…

仏壇店に勤務するライター・玉川将人が、
インド仏教最高指導者・佐々井秀嶺師からの…

あなたが仏壇の本を書きなさい。
ここにいる人たちの力を借りて
ここにいる人たちのために
本を書きなさい。

…という宿題を成しとげるべく、仏壇にまつわるお話を語っていきます。
あなたの力を貸して下さい。あなたのためのことばを綴ります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました