毎日仏壇屋さんの店頭に立っていると、小さい仏壇をお求めの方が実に多いことに気づかされます。
「小さい仏壇がほしい」という方はいても、「大きい仏壇ありますか?」と訊ねてくる方はほとんどいません。
しかし、小さい仏壇にも落とし穴というものがあります。せっかく買ったはいいけれどと後悔することがないよう、現役の仏壇店社員である玉川が、分かりやすく解説します。
小さい仏壇が選ばれる理由
小さい仏壇が選ばれているのには、次のような理由が考えられます。
- 家が狭く、置く場所が限られている
- いつまで祀れるか分からない
- 費用を安く抑えたい
順番に解説いたしますね。
家が狭く、置く場所が限られている
昭和から平成、そして令和にかけて、戸建て住宅は狭くなり、集合住宅に住む人も増えています。住まいの狭小化に比例して、仏壇のコンパクト化も進みました。
また、ひと昔前の日本家屋には必ず「仏間」という空間がありましたが、最近の狭小住宅やマンションなどの集合住宅には、仏間がないことがほとんどです。
部屋数や広さも限られている。となると、必然的に小さい仏壇が選ばれることとなります。
いつまで祀れるか分からない
核家族化、少子高齢化の近年、いまあるお仏壇を、いつまでお祀りし続けられるか分からない方がとても多く、持ち運びのしやすさや、処分時の手間の軽減から、小さい仏壇が選ばれる傾向にあります。
つまり、購入の段階で、将来的に仏壇の移動または処分を前提としているということです。
子や孫が受け継いでくれればいいのですが、実際にはなかなかそうもいかないようです。
子を持たない方が仏壇を購入すると、後を見てくれる人がいないため、結局は処分せざるを得なくなります。
また、子どもがいたとしても、どのようなかたちで仏壇を引き継いでくれるか分かりません。親子が別々に暮らすのも当たり前の世の中、転勤などで住まいをコロコロ変える人も少なくありません。そうすると親からの仏壇を受け継ぐよりも、自分の住まいに合った仏壇を選びたいと考えるのは、自然なことです。
住む場所やライフスタイルがどのように変化するか自分自身でも分からない時代だからこそ、フレキシブルにお祀りできる小さい仏壇が求められているのです。
費用を安く抑えたいから
相対的に、大きい仏壇よりも小さい仏壇の方が費用を安く抑えられます。
お仏壇にお金をかけられない、かけたくないという方が、小さい仏壇を選ぶ傾向にあります。
本当に「上置き仏壇」で大丈夫?
仏壇の形状には、主に2つの種類があります。「上置き仏壇」と「台付き仏壇」です。
上置き仏壇とは、台や棚の上に置くコンパクトな仏壇のこと。一方で台付き仏壇とは、上台(お祀りスペース)と下台が一つになったタイプで、床に直置きします。
「小さい仏壇=上置き仏壇」とお考えの人が多く、それは間違ってはいないのですが、トータル的に考えてその選択がベターかというと、少し早急かもしれません。
上置き仏壇は、台や棚の上に置くのが基本です。床に直置きして、仏さまを見下ろしながら手を合わせるということはあり得ません。
すでに仏壇を置くための台や棚があれば問題ありませんが、もしもこれらをも新たに購入しようとするならば、台付き仏壇を買った方がいいこともあるのです。
その理由は2つあります。ひとつは仏壇の内側の広さ、もうひとつはデザインの統一性。
お客様が見落としがちなとても大事なポイントです。順に解説します。
仏壇の内側の広さ
「小さいお仏壇を買おう」としている方は、
「お仏壇をどこに置こうか」
「寸法はどれくらいか」
…ということばかりに意識が行き、仏壇内部の広さについて考えていないことがほとんです。でも、内部スペースにどれくらいの余裕があるかは、日々の礼拝をストレスなく行う上で、かなり重要です。
なぜなら、おうちの方がお仏壇に対して日々行うことって、
- ごはんや水のお供え
- お花の水の交換
- お掃除
…などだからです。
お仏壇と向き合う上で、お供えやお掃除がいかに大切かという話は、別の記事で書きましたが、お仏壇が狭いと、こうした営み一つひとつがストレスになってしまうのです。
また中には、古い仏壇を新しい仏壇に買い替えるという方も少なくありません。その場合、ご先祖さまの位牌がいくつ並ぶのか、こうしたことも想定して、仏壇を選ばなければなりません。
部屋の広さに対して仏壇の大きさを考えてしまいがちですが、お仏壇の内部にどんなものをどれくらい並べるのかも同時に考えましょう。
見栄えよく展示されている商品や値札に目が奪われがちですが、毎日手を合わせることとなる自身の未来の姿を想像して、仏壇を選ぶことが大切なのです。
デザインの統一性
先ほども触れましたが、お仏壇を地べたに置くわけにはいきません。必ず何かの上に置きます。仏さまを見下ろすことは、とても失礼なふるまいだからです。
すると、コンパクトな仏壇を買ったはいいものの、高さを確保する棚や台が必要となります。
ローボードやタンス、キャビネットなど、すでに自宅の中に仏壇を置くスペースがあれば問題ありません。
もしもそうでない場合、仏壇の専用台を買うこととなるのですが、高さを確保するために別の台を買うくらいなら、台付仏壇にしましょうよ、となるわけです。
台付き仏壇にすることにより…
- 上台と下台がデザイン的に統一される
- 下台がお祀りしやすい設計になっている(目線の高さの計算、机やイスが内蔵されているなど)
- 収納として利用できる
などのメリットが享受できます。
ネットより実物。量販店より専門店の方がいい理由
お仏壇を購入する際は、実際にお仏壇が家に納まり、自らが手を合わせる未来の姿を想像することが大切です。
でも、これまでお仏壇を持ったことがない人が未来を想像するのはとても難しいことです。だからこそ、ネットではなく実店舗での購入がおススメなんです。
ネットでの情報収集ももちろん必要ですが、販売員とのやり取りの方が、圧倒的にたくさんの情報が得られ、解像度高く未来の姿を想像できます。
小さい仏壇は比較的扱いが簡単ですから、ネットショップでもたくさん販売されていますし、最近ではニトリやホームセンターなどでも安くて小さい仏壇が売られています。
でも、お仏壇はただ物を収納するための家具とは意味が違います。中には仏さまがおられ、亡き人やご先祖さまがおられる。こうした目に見えない存在とアクセスするための場所です。
だからこそ、お祀りの仕方にも一定の形式がありますし、日々のお掃除やお供えという営みが意味を持ってくるのです。
仏壇屋さんのポジショントークと言われればそれまでですが、あなたが、亡き人とともに日々をより豊かに過ごせるためにも、
ネットよりも実物を見て触って、購入する
プロの販売員とやりとりしながらお仏壇を決める
…この2点を強調しておきたいところです。
「小さくていい」「安くていい」だけでなく、わが家で手を合わせる未来の姿をしっかりと思い描いて、あなたにぴったりなお仏壇を選んでほしいと思います。
そして、そんな未来をともに描く助けとなるのが、仏壇屋さんなのです。
※追伸
仏壇屋に求められているのは、そんなお客様の声を心で受け止めるカウンセリング力と、お仏壇の機能だけでなく物語をも語れる言語化能力だということを、この場を借りて、自らを戒めます。
仏壇カタルシスとは…
仏壇店に勤務するライター・玉川将人が、
インド仏教最高指導者・佐々井秀嶺師からの…
あなたが仏壇の本を書きなさい。
ここにいる人たちの力を借りて
ここにいる人たちのために
本を書きなさい。
…という宿題を成しとげるべく、仏壇にまつわるお話を語っていきます。
あなたの力を貸して下さい。あなたのためのことばを綴ります。
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