瀕死の黒猫が見せてくれた「生きたい」という生き物の本能−Vol6 ナガトチヒロさん(31歳・ライター)

 

死生観インタビュー。第6回目はナガトチヒロさん(31)です。

若い頃から自殺願望を持っていたと話すナガトさん。彼女を生かし続けているのが2匹の猫です。
特に2匹目のルドルフは、死の間際にありながら必死に生きようとする姿をナガトさんに見せ、そのことがご自身の死生観を大きく変えたと話します。
いじめ、失恋、人間不信。どん底から少しずつ前に向かって歩こうとするアラサー女子の声をお届けします。

私を生かし続ける2匹のネコ

− このインタビュー企画に応募した理由を聞かせてもらえますか?

Twitterの「おすすめ」に表示されて、縁を感じたんです。

- 死について語ることの、どこに縁を感じたのですか?

16歳くらいから自殺願望がありました。大学では文学を学んでいたのですが、小説家にも自殺者が多いのはなぜだろうなんてことも考えました。自殺防止の活動に携わりたいなと思っていたら、会社でうまくやっていけなくて辞めざるを得なくなった。そんなタイミングで玉川さんのツイートがパッと現れたんです。

- いろんなことがナガトさんの中で重なっていたのですね。16歳の頃にどんなことがあったのですか?

対人関係の悩みです。私にとっては人生の課題。どうしても人付き合いが上手でない。まわりに馴染めなくて、いじめられていた。高校に通えなくなって、その劣等感を今でもずるずる引きずっています。

- そうはいえ、ちゃんと大学進学まで果たしていますよね。文学や思想も学んだはず。かつては自殺したがっていたのに、いまでは自殺防止の活動に携わりたいと仰ってる。いいほうに転換しているようにも見えるのですが…。

最近、死んだらダメだな、と思うようになったんです。

- ほお。

死ぬことはいつでもできますけど、生きることは一回しかできないですもんね。どうして、自分を不幸にした人が生きて、不幸にされた人が死ななきゃいけないんだろうって。思います。

- ナガトさんのことをいじめた人たちですか?

はい。

− 死にたいと思っていたナガトさんを生かし続けるものはなんですか?

そうですね。ネコです。

− ネコ?

はい。ネコです。2匹いるんです。1匹目は人生で一番幸せな時に拾った。2匹目は本当に死のう死のうと思っている時に出会いました。

- 1匹目のネコとの出会いは?

ルナって名付けたんですけどね、当時彼氏と付き合っていて、結婚しようと同棲もしてました。その頃に、段ボールに捨てられていた黒猫を拾ったんです。でも、その彼氏とは結局別れることになりました。

- どうしてですか?

宗教観の違いです。彼氏はある宗教を信仰してて、私もそれを受け入れるつもりでいたのですけど、親に反対されて、一緒にい続けることができなくなった。

- 辛かったですね。

彼氏は自分の信仰をとても大切にしました。私は無宗教でしたが、宗教へのシンパシーは感じていました。神社の神様や古事記も好きですし、彼氏の信仰を理解しようと日蓮上人のことも調べました。どんな宗教であれ、彼の人格を作っているのであるならばリスペクトしたかったのです。婚姻届を書くところまで行ったのですが、結局破綻となりました。彼氏のことを愛していましたが、そこから恋愛ができなくなった。

− そうでしたか。

本当に辛くて、死にたい死にたい、死のう死のうとばかり思っていたところで、2匹目のネコと出会いました。名前はルドルフ。

− 黒猫のルドルフといえば、『ルドルフとイッパイアッテナ』ですか?

わあ! すごい。よくご存知でしたね。

− とてもいい絵本ですよね。

私も大好きなんです。「ルドルフ」と聞いて「イッパイアッテナ」を答える人、はじめてです!

斎藤洋さんと杉浦範茂さんによる『ルドルフ』シリーズ(著者撮影)

- そうでしたか。ルドルフとの出会いは?

その頃は本当にどん底で、仕事も人間関係もうまくいかない、もう死のうと思っていた時に、高速道路に捨てられていたのを拾ったんです。

- 高速道路。パーキングですか?

いえ、道をトコトコトコ〜って歩いていたんです。

− 危ないですやん!

ちょうど渋滞中で、車も動いてないところを、私の車の前を横からトコトコトコ〜っと横切ってきた。もう、反射的に車のドア開けて、拾って、助手席に置きました。

- へえ。

がりがりで、ほっといたら死ぬだろうなと思うくらいに脱水症状を起こしていたんです。それでも、水をあげると必死に飲むんです。瀕死のネコも必死に生きようとしているのを見て、きっと生きたいというのが、生き物の本能なんだなと気づきました。それが、私の死生観を変えてくれました。

− すてきな話です。

もともと、ネコのことをそんなに好きじゃなかったのですが、捨てられたり、フラフラしているのを見るとほっとけなくて。ルドルフなんてはじめは保護団体に持って行ったんですよ。

- へえ。飼う気なかったんですね。

はい。でも、あとから団体の方から連絡をもらって、引き取り手が全然現れないと。顔が不細工ですからね。わたしにとっては世界一かわいいネコですけど。

− むしろ絵本のルドルフは不細工ですよね。目がつり上がって。そこがいい。

本当に、ルドルフっていう名前がぴったりなネコなんです。

 

手前がルドルフさん。ぜんぜん不細工じゃない。奥がルナさん。(本人提供)

自分に見えないところにあるもう1つの世界

- 死を考える上で、宗教って避けては通れないと思うのですが、ナガトさんにとって「宗教」ってどんなものですか?

仏教とか、宗教とか結構好きですが、それを他人に話すことはあまりないですよね。我慢してました。大学で文学や美術を学ぶ中で、宗教は国をまたいで普遍的にあることも知りましたし、人間が生きていく上で大事なものなんだということも理解しています。でも、やっぱり「宗教が好き」だなんて公言できないですよね。私の場合は親が極度の宗教嫌いでしたから。

- Twitterのプロフィール欄に心霊と深海が好きと書いていますね。

深海は、行けないから好きなんです。

- 行けないから好き?

はい。宇宙はお金を出せたら行けそうだけど、深海の奥深くには行けそうにない。地球の核に向かっていくところに興味がある。

- なるほど。

『ドラえもん』に、地球の核に向かう話があって、それがすごく好きなんです。深海に牧場があって人が住んでいる。

『ドラえもん』には海底をテーマにした話が多い。(著者撮影)

自分が見えないところにはもう1つの世界があるのではと信じているところがあって。幽霊みたいな存在は、私たちが知らないだけで普通に暮らしているのではと考えると、なんだか楽しいです。

- たしかに、行き先として深海を思い浮かべることってあまり多くないかもしれません。海の底や幽霊の世界といった、自分たちが住んでいる場所とは別の世界があるのではという仮説というか、ファンタジーというか、そういうものがナガトさんにとっては、救いや癒しや希望になっているのでしょうか?

それもあるかもしれません。あと、自分の作品を作る上で考えているのは、いま自分が見ている世界は、UVや赤外線を通して見せられている世界にすぎないということ。違うものを通して見てみたらもっと違う世界が広がるのではと思うんですよね。それはきっと、この世界ではダメでも、こっちの世界では認められるのではという期待や願望があるかもしれません。そういうこと、大学時代からずっと考えています。

− そういう世界観って、周りの人たちに理解してもらえますか?

理解されないですねー(笑) 変わっているとばかり言われています。オカルト、宗教と見られがちです。まあいま、オカルト研究家の山口敏太郎先生にお世話になっているのですが。

- なかなか理解されないですよね。

でも、死生観を話したいけど話す場がないっていう人はむちゃくちゃいると思いますよ。同年代の友達と話す内容って、結婚、彼氏、ネイル、趣味とかですけど、わたしはもっと、心の核を話したい。そう思ってましたから、今日のこの機会に本当に感謝です。

山口敏太郎さんの事務所への参加と、インタビューと、31歳の誕生日が重なったというナガトさん。死にたいとばかり考えていた10代、20代をくぐりぬけ、素敵な30代を迎えてほしいと思います。

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