耐えがたい現実が必ずやってくる。
自殺はするな。
コロナウイルスが猛威を振るう中、安倍政権は1都7県に緊急事態宣言を発令。
その翌日、あのサッカー日本代表の本田圭佑さんから強烈なツイートが届きました。
とりあえず自粛の足並みは揃ったと。問題はここから想像を超える経済危機がやってくる。経済対策は延命処置でしかなく、自分は大丈夫と思ってる会社までもが倒産する。失業者が増える。耐えがたい現実が必ずやってくる。自殺はするな。やるべきは今から心身共に最悪を想定した準備を始めること。
— KeisukeHonda(本田圭佑) (@kskgroup2017) April 8, 2020
耐え難い現実が必ずやって来る。自殺はするな。
すごいことばですね。
とても強烈です。
そして、深く同意します。
私の父の話を少し。
父は、平成18年4月5日、息を引き取りました。桜の森の満開の幹にひもを括り付け、自ら命を絶ったのです。
リーマンショックの2年前のことです。
父は料理人でした。38歳の時に独立し、和牛料理の専門店を開業。これまで専業主婦だった母と二人三脚でお店を切り盛り。
バブル景気と、一流の腕前と、マーケティング力で、お店は大繁盛。まもなくバブルが崩壊していろんな飲食店がバタバタ倒産していく中、父のお店は何とか持ちこたえていました。
長引く平成不況はジャブのように効いてきて、客足は徐々に遠のくというのに、それでも根強いファンになんとか支えられていた。
私にとっても、父のお店は誇りでした。
その父がこと切れてしまった。
理由はいろいろあります。不景気で商売が立ち行かなくなったというのももちろんです。
でも、一番の理由は、二人三脚だった、妻(私から見た母)の急死でした。
母と二人で切り盛りしていたお店。仕事一筋の父でした。
特に友達もいない。趣味もない。息子たちは遠くに住んでしまい、環境的に孤独を強いられてしまったのです。
それからも、パートを雇ってなんとかお店を維持していましたが、
2年後、お店を畳むよりも先に、母のあとを追いました。
私の中には、晩年の父に寄り添えなかった悔いが、いまもずっとあります。
父の孤独よりも自分のしたいことを優先させてしまったことの悔いが、滓のように凝り固まっています。寄り添えたはずなのに、と。
圧倒的な孤独の中で迎える真夜中は、耐えがたい。
そして朝があけても、また新しい1日が始まることが怖い。そして、空虚な日中を過ごす。
そういう状況に父を追いやってしまったのです。
長く続く不況の中、お金が無くなっても、母がいれば、そして僕がそばにいれば、きっとなんとかやっていけた父を思うとね、こう考えるんです。
人間は、お金がなくても生きていける。
人間は、孤立してしまった時に、生きていけなくなる。
本田圭佑さんは、すごい警告を放ってくれました。
経済危機と自殺。
経済が立ち行かなくなっても人はなんとか生きていける。
しかし、経済の破綻は孤立を生み出します。これがこわい。
だいじなのは、大切な人とのつながり。
どんなにお金がなくても、食べるものに困っても、助け合う仲間がいればなんとかなる。
家族でも、友達でも、職場の同僚でも、なんでもいい。誰でもいい。
父が飲食店をしていたからこそ、思い出す。
いま、飲食店の人。とっても大変だと思う。
医療現場の方々も、鉄道やバスや公共インフラを整えてくれている人たち。
さらには寝る間も惜しんで国を守ろうとする政治家や行政の人たち。
学校の先生、スーパーやコンビニやドラッグストアの店員さん。
そして行き場のない子どもたち。その子どもたちを受け入れるすべてのママやパパたち。
みんな、大変だと思います。
そして、父が自ら命を落としたからこそ、想像する。
コロナウイルスで亡くなった人、家族を失った人、
感染してしまった人、社会に迷惑をかけてしまうと震えている人。
その苦しみは想像を絶します。
どんなにいまが苦しくても、
それでもこの世に生まれた以上は、這いつくばってでも生きていかなければならないし、
生きていれば、いつの日か必ず何とかなり、この傷は挽回できます。
だからこそ、何があっても、
自分の手で自らを殺めることを、わたしは全力で引き止めたい。
そして、いまこそ、自分勝手に生きるのではなく、毎日顔をあわせる人たちを大切しましょうよ。
私が私を救えなくても、仲間が私を救ってくれる。
私は、父の死に報いるためにも、絶対に死なせないし、そのために、私も死なない。
準備すべきは、経済対策だけじゃない。
自分の生き方、そして大切な人との向き合い方を見直すときが来たのです。
もう一度、本田圭佑さんのことばを借ります。
耐え難い現実がやってくる。自殺はするな。
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