お仏壇の処分がバチあたりにならないために|朝日新聞社『相続会議』への寄稿を終えて

朝日新聞社『相続会議』に寄稿するご縁を頂きました。とてもありがたいことです! 朝日新聞社さま、ありがとうございます。
書かせていただいたテーマは、「仏壇の処分」についてです。詳しくはぜひこちらをご覧ください。

仏壇の処分方法 無料でできる? 粗大ゴミに出してよい? 費用や注意点を解説 | 相続会議
仏壇のような、いわゆる「祭祀財産」を粗大ゴミや燃えるゴミとして捨てることはできます。しかし、閉眼供養(魂抜き)が必要です。仏壇の正しい処分の方法や流れ、費用について解説します。

このブログでは、その編集後記的な感じで、仏壇店で日々働く上での、お仏壇の処分の生の現場についてお伝えしようと思います。

お仏壇を処分しなければならない人たち

仏壇店に勤務していますと、お仏壇の処分に関する問い合わせをよくいただきます。

「すみません。お仏壇の処分とか、してもらえるんですか?」
「古いお仏壇を処分して、新しいお仏壇を買い替えたいのですが…」
「お仏壇を下取りしてほしいのですが…」

と、まあこんな感じです。

たくさんのお問い合わせをいただいてますと、お仏壇の処分を考えている人の属性というものがおのずから見えてきます。主にこうした方々です。

  • 空き家となった実家の売却や解体にあわせてお仏壇も処分。
  • あととりがおらず、仏壇を守る人がいない。
  • 実家の仏壇を受け継ぎたくても、大きすぎて自分たちが住む家の中に入らない。

少子高齢化や核家族化に伴って、家族のあり方は大きく変化しており、お仏壇の処分が増えてしまうのは、ある意味必然と言っていいのでしょう。

仏壇屋さんとしては複雑な想いがしますが、致し方ありません。

お仏壇の処分はバチあたり?

バチあたりかどうかは、処分に向き合うあなた自身の心によるのではないでしょうか。

基本的に、承継が困難なお仏壇を処分することは、子孫が果たすべき大切な行為であり、処分そのものがバチあたりだとは思いません。

これまでご先祖さまや両親が守ってきたお仏壇を、自らの手で片づけてしまうことにうしろめたさを感じる方は少なくありません。にもかかわらず、子や孫に先送りせず、お仏壇の問題を自ら解決しようとすることそのものは貴いことだとすら思います。

これは、墓じまいでも同じことが言えますが、お仏壇をそのまま放置しておくことは、ご本尊やお位牌の無縁化を意味します。

そうじゃなくて、「自分たちが元気なうちにお仏壇を処分して、新しいお仏壇を買おう、あるいは位牌をお寺に預けて永代供養してもらおう」と考えるのは、ご先祖さまを大事に思っているからじゃないですか。

だからこそ、いざ処分する時には、これまでご先祖さまを守ってきて下さったというそのお役目に対して、感謝の想いを抱いてほしいです。

もしもそうした想いがないままにお仏壇を処分してしまおうと考えるのであれば、それこそバチあたりになってしまうかもしれません。

お性根抜きはしないとダメ?

はい。お性根抜きして下さい。
私の勤務する素心では、お性根抜きのされていないお仏壇は原則として引き取りません。

日本人は、目に見えない存在を大事にします。お性根抜きをしていないお仏壇を処分することで万が一のこと(事故とか、病気とか、アレとか、コレとか)が起きてしまったら、これは取り返しがつきませんし、そうした因果みたいなものを、日本人は畏れますよね。

もちろんこうした科学的根拠のないことを気にしない人もいることでしょう(実際にそうしたお客様もいます)し、仮にお性根抜きしていないのに「ちゃんとお性根抜きしてもらっているよ」と言われたなら、こちらとしてはそのことばを信じるほかありません。

もうそこはお客様判断になってしまいますし、私たちもお客様の良心を信じるしかないのです。

あと、これはさっきの「バチ当たり」の話と重なりますが、お性根抜きの法要は、ただ「霊魂を抜く」という儀式にとどまらず、これまでの感謝を表明する儀式でもあり、これは結構重要なことではないかと考えます。

外的にお性根や霊魂があるかないかに関わらず、自身の内的な問題として、区切りとなる儀式を営むことで、私たち人間は、目に見えない不安や畏れを落ち着かせ、安心感を得られるのではないでしょうか。

中には、お性根抜きのされていないお仏壇の引き取りを受け入れる業者さんもあるかもしれませんが、私は受け入れがたいです。

お仏壇の下取りはしてくれないの?

私の勤務する素心では、下取りはしないです。

お仏壇は、そのおうちの仏さまや亡き人が納まる場所ですから、再利用というのは現実的ではありませんし、仮にリフォームした上で再販したとしても、買い手が付くのかという商売的な事情もあることでしょう。あなたは大切なご家族を、リサイクル仏壇の中でお祀りできますか?

もちろん、「所有からシェアの時代へ」なんて言われてますし、人が住み家の場合、中古物件というのは当たり前に売買されています。リサイクルやリユースはあらゆる場所で見られる現象ですから、今後お仏壇の下取りが今以上に広がる可能性は、ゼロではないのかもしれません。

お性根は、仏壇にではなくご本尊や位牌に込められている

『相続会議』の記事をFacebookでシェアして下さった方がいて、それに対して、とある僧侶(だと思う)の方から次のようなコメントが寄せられました。

んー、わかって書いておられるのか、それともややこしいから書いておられないのかわかりませんが…。
仏壇自体にはお魂も何も入っていないです。
仏壇の中に祀られている本尊様、両脇様、お位牌にお魂が入っています。
だから正確には仏壇の中に収められている各仏様のお魂入れ、お魂抜きとなります。
なので、仏壇を買い替えるだけなら私はお魂抜きもお魂入れもしません。
ご本尊様も両脇様もお位牌も何も変わらないからです。

これはとても正しいご指摘です。
記事中の私の言及が足りていなかったなあと、反省しています。

ただ、仏壇店の人間からすると、お客様の多くは仏壇と本尊の区別はついていませんし、仏壇そのものをも粗末に扱ってはいけないと考える方がほとんどです。たとえば…

「ご本尊とお位牌以外は魂は込められていないので、ゴミに出してもらっても構わないですよ」

…とお伝えしたとしても、多くの方は自らゴミに出そうとはされないですね。一部、自らゴミとして処分される方はいますし、それ自体は、分別方法などをきちんと守ってさえすれば、何ら問題ありません。ただし、ほとんどの方は、「仏壇店に全てお任せします!」と、私たちに仏壇仏具の一切の処分を委ねます。

「ちーん」と鳴らすおりんも、お花を供える花立も、これらはお仏壇を荘厳するためのただの道具に過ぎないのですが、日々礼拝のために使われている道具にも、仏性や霊性みたいなものを感じているのでしょうね。日本人特有のモノに対する畏れ概念を、ここに見ることができます。

ですから、この方の冒頭1行目、「んー、わかって書いておられるのか、それともややこしいから書いておられないのかわかりませんが…。」という前置きは、ものすごく正しくて、現場の事情を理解して下さっているゆえのものだと感じました。

できれば「処分」と言いたくはない

お仏壇はただのモノではないですから、できれば「処分」ということばを使いたくないのが本音です。

でも、実際にたくさんの方がGoogle検索で「仏壇 処分」というワードで検索しているわけですね。そうである以上、「処分」というワードを用いて文章を組み立てないといけないわけです。

くり返しになりますが、お仏壇の処分は、モノとしてのお仏壇は処分しても、中に祀られているご本尊や位牌はお寺に預かってもらう、あるいは新しいお仏壇に買い替えて祀り直しをするのが基本です。

モノこそ処分されるものの、仏さまやご先祖さまへの供養は続いていく、ということです。

その点だけをきちんとわきまえた上で、これまでお世話になったお仏壇に感謝を込めて処分する、そんな感謝あふれるお仏壇処分のお手伝いをするのが、われわれ仏壇店のだいじな役割なのだなあと、今日も考えております。


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